教授からのごあいさつ
21世紀の医学は予防医学が中心となっていくことが予想されています。わが国を含む先進各国では循環器疾患や癌など生活習慣病の予防が大きな課題です。公衆衛生学(public health)は人間の健康を集団として衛り、疾病を予防するための科学であり、そのために私たちは疫学(epidemiology)という研究手法を用います。
当部門は前任の上島弘嗣教授の時代から、循環器疾患・生活習慣病の予防のための疫学研究の分野で日本と世界をリードし、数々のエビデンスを創出・発信してきました。2009年12月より三浦が部門の教授を引き継ぎ、もうすぐ10年になります。2013年10月には本学の多くの疫学研究を発展させる場として、アジア疫学研究センターが開所し、三浦がセンター長を務めています。また、開所と同時に、生活習慣病の疫学・医療統計学・予防医学・臨床研究・公衆衛生学のリーダーを養成する博士課程教育リーディングプログラム「アジア非感染性疾患(NCD)超克プロジェクト」が文科省補助を受けて開始され、当部門とアジア疫学研究センターが中心的な役割を果たしています。
大規模な人間集団を対象とする疫学研究は多大な労力と長い時間を要するものですが、これまで国内外の多くの共同研究者と力を合わせて多彩な研究を行っています。NIPPON DATA80/90/2010、SESSA、INTERMAP、高島研究、滋賀県循環器疾患登録研究、EPOCH-JAPANなどなど、詳しい研究内容や成果をこのホームページでぜひご覧下さい。
わが国および世界における疾病構造や生活習慣・生活環境が時々刻々と変化する中、公衆衛生学・疫学の果たす役割は今後ますます大きくなります。当部門で継続してきた疫学研究をさらに発展させるとともに、予防医学と疫学の将来を担う医師・医学研究者の育成を続けてゆきます。
中国では古来「上医医未病病(上医は未だ病まざる病を医す)」と言う言葉があります。ともに予防医学研究・疫学研究に取り組んでくれる若い人の参加を心から待っています。
2019年4月1日